2016.7.23

『ヴェニスの商人』を観た後は、ヴェネチアングラスで乾杯!?

暑くなってしまいました。やはりお天道様を怒らせたようです。ゴメンナサイ…。

 

さて連日ヴェネチアングラスとかガラスの歴史とかと申しておりますと、

どうしてもお話ししたくなってしまいますのが、『ヴェニスの商人』のお話しです。

16世紀のヴェニスを舞台に数隻の貿易船を所有する裕福な貿易商アントーニオ

ユダヤ人の金貸しシャイロックというライバル同士の闘いを描いたシェークスピアの戯曲です。

 

当時ヴェニスは西欧と東方を結ぶ地中海貿易で栄え、経済的繁栄に加え、

オリエント、イスラム、ゴシック、ルネサンスと様々な文化が混在する海洋都市でした。

(この貿易にヴェネチアングラスのモデルとなったイスラムガラスがあったわけです。)

ここに住むユダヤ人は”ゲットー”と呼ばれる地区に隔離され、夜間は施錠、

昼間地区外に出るときは赤い帽子の着用を強いられ、就ける職業も限られていました。

(ムラノ島に隔離されたガラス職人と似ていますね。)



ヴェニスの美しい風景を背景に展開されるヒューマンドラマ。

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ある日アントーニオの元に、若い親友バッサーニオが借金の申し込みにやってきます。

ベルモントに住む美女、莫大な富を相続した令嬢ポーシャにプロポーズするためです。

あいにく全財産が洋上にあったため、アントーニオは自分が保証人になることを提案し、

高利貸しシャイロックを紹介します。

シャイロックは、いつも自分を蔑んで意地悪をしてくるアントーニオを憎んでいましたが、

“ある条件”をつけてバッサーニオに金を貸すことを承知します。

 

シャイロックから借りたお金を手にベルモントへ旅立ったバッサーニオは、

数々の難問をクリア、見事ポーシャの心を射止め、結婚式を挙げることになります。

ところがそこにアントーニオの全財産を積んだ船がすべて難破した知らせが届きます。

急いで戻ってお金を返済しなければ、親友アントーニオが死んでしまうかもしれない!

シャイロックがお金を貸しときに出した条件とは、

“期限以内に返済がない時はアントーニオの肉1ポンドをもらう”というものだったのです!

 

バッサーニオは大急ぎで借りた額の2倍の金をもってヴェニスに帰りましたが、

時すでに遅し…。法廷で証文の正当性を主張するシャイロックは、

2倍の金を受け取らず、頑としてアントーニオの肉を要求します。

いつも自分を目の敵にしてきたアントーニオを憎むと同時に、

ユダヤ人を隔離し迫害するキリスト教社会全体に恨みを募らせていたのです。



映画『ヴェニスの商人』ではアル・パチーノがシャイロック。

アントーニオはジェレミー・アンアンズ。良くまとまっていて楽しめます。

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椅子に縛り付けられたアントーニオの胸から、

今にも肉が切り取られそうになったその時、法廷に現れた法学博士がこう言い放ちます。

『証文には一滴の血も記されていない。一滴の血も流すな。

切り取る肉は正確に1ポンド。多すぎても少なすぎても、死刑。そして全財産没収!』

 

この一言で裁判は逆転。

シャイロックは財産没収、キリスト教への改宗の判決を受けてしまいます。

宿敵アントーニオへの恨みを晴らしそこねただけでなく、全財産を失い、

最愛の一人娘にまで駆け落ちされてしまい、シャイロックは打ちのめされるのでした。

(シャイロック可哀想…(;_:))

 

ところで、大逆転をもたらした法学博士は、いったい誰だったのでしょう?

それはなんとバッサーニオの新妻ポーシャ。

彼女は夫の親友の危機に、果敢にも男装して法廷に現れたのです。

彼女はシェークスピア作品の中でも、最も頭の良いヒロインと言われています。



平幹次郎さんのシャイロック。迫力と哀愁が素晴らしいです。

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ガラスの話から脱線してしまいましたが『ヴェニスの商人』いかがでしたでしょうか?

(まとめ方がへたでゴメンナサイ!)

宿命のライバルのヒューマンドラマかと思えば、

ロマンチックなラブストーリー、スリリングな法廷劇が加わり、

昔話的な物語展開にどんでん返しとシェークスピアの戯曲の中でも、特に魅力的な作品です。

機会がありましたら、是非劇場でご覧くださいね。

観劇後、ヴェネチアングラスでカクテルなどお召しあがりになれば、

16世紀のヨーロッパの世界に溶け込めること請け合いです。

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Writer


エレガントライフアカデミー代表
原田 章子 Harada Shoko


福岡市に生まれる。福岡雙葉小学校、中学校、高等学校卒業。白百合女子大学文学部、国文学科卒業。

90年代よりテーブルアートを志し、フランス留学。料理学校『コルドン・ブルー』、『リッツ・エスコフィエ』で料理と製菓を学ぶ。公爵夫人マリー・ブランシュ・ドゥ・ブロイユに師事し、フランス食文化史を学ぶ。パリの生花店『コム・オ・ジャルダン』で修業。その後も定期的に渡仏し、同店で研修を受ける。

2015年、母、原田治子逝去に際し、エレガントライフアカデミーの代表に就任。当Blogの執筆も手掛ける。