2016.12.21

『4人目の博士・アルタバル』 クリスマス物語③

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ベルリンでXmasマーケットにトラックが突っ込み、

多くの市民が犠牲になるという傷ましいという事件がありました。

 

IS系組織が犯行声明を出したようですが、その真偽はともかく、

こうした衝撃的な事件が繰り返されることによって、政治的利権の問題が

中東と西欧、イスラム社会とキリスト教国の対立にすり替えられて、

人々の心の中に恐怖や憎しみが増長していかないか心配です…。

 

ごく一部の人は戦争で得をするかもしれませんが、ほとんどの民は苦しみ、傷つき、失います。

“国家を、家族を守るための戦争”、”聖戦”などというウソにどうか騙されることのないように…。

 

4人目の博士

 

救い主、イエズス・キリストの誕生を星のお告げによって知った東方の3人の博士が、

幼子に贈り物をしたというお話は、良くご存知だと思います。

実は博士は三人ではなく、もう一人いたという言い伝えがあるのす。





その4人目の博士、アルタバルは医師でしたが、妻子と別れ、財産をすべて売り払って、

キリストへの贈り物にするつもりで真珠を求め、ベツレヘムに向けて旅立ちました。

ところが道中で病人やけが人を見かけては、手当てをしているうちに

ベツレヘムに着いたときは聖家族はそこを去った後でした。

 

その日から“イエズス・キリストを探し求める”という新たな旅が始まります。

ところがどういうわけか、彼の行く先々にはいつも、医師としての彼を必要とする病人や

貧しさのために悪事を働く人々がいて、アルタバルはその人々に手を差し伸べ、

生活を共にし、立ち直る手助けをしているうちに、瞬く間に30数年が過ぎました…。

 

ある日イエズスが処刑されるという知らせが届き、年老いたアルタバルは、

これが最後の機会と立ち上がり大切に持っていた真珠を手に、カルワリオの丘を目指します。

それなのになんということでしょう?

またしても不幸な女性に出会い、彼女を助けるために、真珠を手放してしまったのです。

そうしている間にイエズスは十字架上で息を引き取ります…。

 

嘆き悲しむアルタバルに、キリストが現れこう言いました。

『私に会えなかったと嘆くことはない。お前が自分を犠牲にして親切にした病人や罪びと、一人一人の中に私はいた。

だから、何度も何度も会っていたのだ。』

 

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アルタバルは”東方からやってきた博士”ですので、ユダヤ社会では異邦人です。冷たくされることもあったでしょう。

その彼が自分の家族や心からの望みを犠牲にして、他人である目の前の苦しんでいる人々につくしました。

それこそがキリストが説いた”隣人愛”なのです。

 

世界にはいろいろな人がいます。肌の色、言葉、生活習慣、宗教、経済力……けれども

お互いの違いを見つめて気色ばむより、同じところに目を向けてみて。

血があって肉があること、心臓があって動いていること、助け合って生きていること、

母親のお腹から生まれてきたこと、怪我したら痛いこと、死んだら悲しむ人がいること…。

 

ね、違いより、同じところの方がずっとずっと多いこと、わかるでしょう?

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Writer


エレガントライフアカデミー代表
原田 章子 Harada Shoko


福岡市に生まれる。福岡雙葉小学校、中学校、高等学校卒業。白百合女子大学文学部、国文学科卒業。

90年代よりテーブルアートを志し、フランス留学。料理学校『コルドン・ブルー』、『リッツ・エスコフィエ』で料理と製菓を学ぶ。公爵夫人マリー・ブランシュ・ドゥ・ブロイユに師事し、フランス食文化史を学ぶ。パリの生花店『コム・オ・ジャルダン』で修業。その後も定期的に渡仏し、同店で研修を受ける。

2015年、母、原田治子逝去に際し、エレガントライフアカデミーの代表に就任。当Blogの執筆も手掛ける。