2016.2.6

“スパイスが世界地図を塗り替えた?” 『 西洋料理の歴史 ①』

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ハワイのお土産にオーガニック・スパイスを頂戴しました。シナモンと胡椒(ホール)です。



お料理とお菓子作りに、私が一番使用するのがこの二つのスパイスですので大変有難いです。

さて皆様はかつてスパイスが、西洋料理の歴史において主役級の存在だったことをご存知でしょうか?

 

西洋料理は牧畜、狩猟を中心に生活を営んでいた遊牧民が、東方の発達した農業に出会い、

徐々に洗練されていったことにその始まりを見ることが出来ます。

 

農作物が計画的に生産されるようになった後も、貴族ら上層階級の食事は獣肉中心でした。

冷蔵冷凍設備のない時代のこと、料理の高度化が求められる中、

スパイスが大きな役割(肉の保存と臭み消し+風味づけとして) を果たすことになります。

 

スパイスの産地はインド以東に限られていたため大変高値で取引され、(金や銀と匹敵したと言われます。)

15世紀にオスマン帝国が興って陸路でのインドとの交易がさまたげられたのをきっかけに、

ヨーロッパ人はスパイスを求めて新航路の探索に着手し、

コロンボスの新大陸発見、バスコ・ダ・ガマのインド航路発見に繋がることとなりました。

(コロンボスの肖像画といわれる↓)





(copyright Wikipedia )

 

「よりたくさん、より安全に、より美味しく食べたい。」という人間の食欲が、

世界地図をどんどん書き換えていったのです。

 

ヨーロッパで最初に料理が発達したのはイタリア半島でした。

古代ローマ人はギリシャなどから影響を受けつつ、独自の料理を作り上げました。

美食も大食も区別されない中世、十字軍の時代を経、西欧が東洋の豊かさに近づくルネッサンスの時代、

東のスパイス、コーヒー、砂糖などをヨーロッパにもたらしたのもイタリアです。

これはベネチアの商人、西欧中世の交易を支配していたフィレンツェのメディチ家などの功績といえます。(15世紀、大航海時代の世界地図↓)





(http://commonpost.info/?p=53473)

 

いっぽう、依然としてあぶったり、ボイルしたりした肉を主とし、野菜の調理法も知らず、

痛風に悩まされていたフランスの王侯貴族の食卓にも、

ようやく新たな味覚の喜びがもたらされることになりました。

ルネッサンスの都イタリアのフィレンツェから、

カトリーヌ・ド・メディチが後のフランス国王アンリ二世の后として迎えられたのです。

メディチ家の料理人たちは、スパイスの香りや、新大陸からきた珍しい食材、進んだ調理法などを持ち込みました。





(copyright Wikipedia )

 

やがてルイ14世太陽王の時代を迎え、フランスは17世紀中期以降ヨーロッパ政治、経済の中心となり、

料理もまた王侯貴族の館で一層磨きがかけられていきます。

 

今日フランス料理が、世界3大料理の一つとして君臨しているのはスパイスのお陰と言えなくもない訳です。

減塩、減糖にも役立つスパイス。いろいろな種類に挑戦してみるのもいいですね。





エレガントライフアカデミーの各セミナーでは、「もてなし上手の第一歩は食器や素材へのリスペクトから、

そして歴史を学ぶことこそ、最大のリスペクトとなる」という考えから、毎回歴史のお話から講義を始めます。

学校では歴史が嫌いだったという方からも「食という身近なところから見直すと面白い。」

「西洋史に興味がわいてきた。」と好評いただいております。

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Writer


エレガントライフアカデミー代表
原田 章子 Harada Shoko


福岡市に生まれる。福岡雙葉小学校、中学校、高等学校卒業。白百合女子大学文学部、国文学科卒業。

90年代よりテーブルアートを志し、フランス留学。料理学校『コルドン・ブルー』、『リッツ・エスコフィエ』で料理と製菓を学ぶ。公爵夫人マリー・ブランシュ・ドゥ・ブロイユに師事し、フランス食文化史を学ぶ。パリの生花店『コム・オ・ジャルダン』で修業。その後も定期的に渡仏し、同店で研修を受ける。

2015年、母、原田治子逝去に際し、エレガントライフアカデミーの代表に就任。当Blogの執筆も手掛ける。