気持ちの良い風の吹き抜ける日曜日。炊事に掃除、お洗濯…元気に楽しく出来ました。
お恵みですね!
本日はガラス器の製法についてお話ししたいと思います。
14世紀~16世紀、ヨーロッパを席巻したヴェネチアングラスは、
イスラムやビザンチンの伝統を継承した鉛を含まないソーダガラスでした。
まず吹き竿の先に溶けたガラス種を息で風船のように膨らませ、
器の形を作ります。(吹きガラス)
そして炉から解けたガラス種を金属の棒で巻きとり、
冷えて固まらないうちに鋏などの道具を用いて器に装飾を施します。
すべてフリーハンドで制作され、その作業はホットワークと呼ばれます。
溶けたガラスが固まらないうちに細工を施すヴェネチアングラスは
マエストロの個性や人間性などが作品に色濃く反映され、
やり直しがきかない即興的な手さばきから生まれる極限的なフォルムからは、
他のガラス製品にはない温かさや軽やかさ、優雅さが感じられます。
一方、17世紀にイギリスで開発されたと言われるクリスタルガラスは
酸化鉛を加えることによって、透明度を上げたもので、
冷えてすぐに固まるため一度型に流し込んで成型した後、
彫刻などの装飾を施すことから、コールドワークと呼ばれます。
切子に代表され、ガラスの表面をグラインダーで削り取って多面化するカットの他にも、
回転するグラインダーを用いて模様を施す、グラビール、
ガラスの表面を液体によって腐食させ、文様を浮き彫りするエッチング、
2層壁のガラスに金による装飾を施す、ゴールド・サンドイッチなど、
多様な装飾技法が用いられ、職人の高い技術が必要とされます。
クリスタルガラスの魅力はなんといっても、
水晶(クリスタル)にたとえられるほどの透明度の高さ。
そして装飾によるシャープさ、硬質な輝き、高貴なまでの美しさは
“ガラスの王様”とまで呼ばれます。
19世紀にはアメリカで型ガラスが開発されます。
左右(あるいは上下)別の型を用いて形をつくり、型から出した後くっつける方法で
ベネチアングラスに負けない複雑な形のガラス器の大量生産を可能にしました。
デザインガラスとも呼ばれ、安価さとクリスタルガラス並みの透明度で
人気を誇りました。
母と私は19世紀のデザインガラスが大好き。普段使いし易い価格というだけでなく、
ベネチアンガラスのような温かみがあり、それでいて気取らずチャーミング。
型をつくる職人の苦労や、上手く出来たときの喜びが伝わってくるのです。
アンティークになりますので人数分揃えるのは、なかなか難しいのですが
お教室でも、一点でも使えるシュガーポット、ミルクポット、
フルーツボールなどを愛して使っています。
皆様もエレアカにお越しの際は、
どうぞデザインガラスのチャーミングさに触れてくださいね!
エレガントライフアカデミー代表
原田 章子 Harada Shoko
福岡市に生まれる。福岡雙葉小学校、中学校、高等学校卒業。白百合女子大学文学部、国文学科卒業。
90年代よりテーブルアートを志し、フランス留学。料理学校『コルドン・ブルー』、『リッツ・エスコフィエ』で料理と製菓を学ぶ。公爵夫人マリー・ブランシュ・ドゥ・ブロイユに師事し、フランス食文化史を学ぶ。パリの生花店『コム・オ・ジャルダン』で修業。その後も定期的に渡仏し、同店で研修を受ける。
2015年、母、原田治子逝去に際し、エレガントライフアカデミーの代表に就任。当Blogの執筆も手掛ける。