エレガントライフアカデミー創始者、食卓演出家・原田治子の一生の物語です。
バックナンバー①~⑪は『原田治子Story』でお読みいただけます。
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音楽家の妻としての5つの目標を立てた母は、早速一番目のテーマに着手しました。
それは父の健康管理。痩せ形で胃腸が弱く、いったん風邪をひくと3か月は引きっぱなし、
そんな父の体調を食生活の改善や、規則正しい生活習慣で整える計画を立てたのです。
父は留学中の長女の誕生日。右は祖父。後ろのテーブルには母が刺繍したテーブルクロスがかかっています。
そのかいあってか、私たちが子供の頃には考えられなかったほど、今では体が強くなり、
気が付いてみれば入院・手術などは一切なく、保険会社から健康祝い金をいただいてしまうほど。
外出から帰っての手洗い、うがいは母が亡くなった今でも、習慣になっています。
これは50年にわたる長期戦の結果といえるでしょう。
またそれと並行して、結婚生活初期の母がピアニスト原田吉雄の音楽家としての将来に
欠かせないものとしてイメージしていたのは、欧州留学。
ドイツに留学していた桐朋学園の同窓生が、父を誘ってくれた機会を逃さず、
母は実家に留学費用の援助を頼み、一年間の留学を決めました。
昔から外国への憧れが強い母のこと、もちろん妻として同行するつもりでいたところ、
子供が小さいということで、祖父母に反対され断念。(費用を出してもらうので逆らえません…。)
更にいったん帰国後、再留学という運びになった時も、次女を身もごっていることが分かり、
またしても同行を諦めざるを得ませんでした。
留学中の父、原田吉雄。友人と。
同行に反対したものの、一人で子育てをする娘を気遣い、祖母は頻繁に様子を見に訪れ、
勤め人ながらも、機械マニアでアマチュア発明家でもあった祖父も、
家中の窓と出入り口に警報器を設置し、異常があれば自分の住まい(中央区)に知らせが来るように設定しました。
(セコム並みですね…。)
一方留学中の父は、費用を工面してくれた母と祖父母への感謝の気持ちとして、
毎日のようにポストカードで近況を知らせ、
時折、母が喜びそうな、ヨーロッパのインテリア雑誌を送ってよこしました。
ページをめくるたびに展開される、夢のように美しい室内装飾やお料理、テーブルコーディネートの数々…、
母はページがはずれるまで繰り返し見ながら、どんなに憧れを抱いたことでしよう。
「このような素敵な生活が出来たら、どんな素晴らしいかしら!
これらすべてを一度に手に入れるのは無理かもしれないけれど、一部なら出来るかもしれない。
そう、少しずつなら、出来るかもしれない!」
それらを参考に、純日本家屋だった家を少しずつ洋風に改造しながら、
結婚祝いに贈られた品や祖母から譲り受けたもの、自分で求めてた品などを組み合わせて、
好きな世界、美しいと思うイメージ、憧れや感謝の気持ちを、インテリアやテーブルに表現する。
自己表現の喜びを育んでいったのでした。
父が留学中の母と子供たち。祖母と。後ろの食器棚には奥村から頂戴した大倉陶苑のティーカップ&ソーサー。
エレガントライフアカデミー代表
原田 章子 Harada Shoko
福岡市に生まれる。福岡雙葉小学校、中学校、高等学校卒業。白百合女子大学文学部、国文学科卒業。
90年代よりテーブルアートを志し、フランス留学。料理学校『コルドン・ブルー』、『リッツ・エスコフィエ』で料理と製菓を学ぶ。公爵夫人マリー・ブランシュ・ドゥ・ブロイユに師事し、フランス食文化史を学ぶ。パリの生花店『コム・オ・ジャルダン』で修業。その後も定期的に渡仏し、同店で研修を受ける。
2015年、母、原田治子逝去に際し、エレガントライフアカデミーの代表に就任。当Blogの執筆も手掛ける。